大吉は凶に還る

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新潮四月号

28 May 13 - 04:32

 ▼新潮四月号は『小説の政治性と芸術性の問題』の課題で、本多顕彰、富沢有為男、保田与重郎、伊藤整の四氏が評論をかいてゐる。  ▼これらを読んで感ずることは、作家、評論家にも、いよいよお灸が利いてきたらしいといふことだ、これは四氏のみに当てはまる言葉ではないが、事変下の大方の作家、評論家は、情勢に応じて、作家行動も、かなりいい加減な合理化をやつて、心理生活の間に合せをやつてきたものが、こゝへ来ては、いよいよモグサの熱さから、肉体の熱さに移つてきて、その言説も、いやでも実感を帯びないわけにはいかなくなつたやうだ、新潮の評論四氏何れも甚だ実感的文章である。  ▼なかでも本多顕彰氏は『も一つ前の問題』といふ題下に、近来の大激憤を洩してゐる、彼の論旨は、政治家に要望して『政治が文学に話しかける時、政治は己れの中のヒューマニズムを省みなくてはならない――』といふのである。  ▼しかし考へても見よ、本多氏のいふ政治の中のヒューマニズムなどとは、いつたいどんな姿恰好をしたものを指していふのか、これまで政治が政治自身の中のヒューマニズムなどを、只の一度も論じたり検討したりした証しでもあるといふのか、一方文学者にしても文学自身のヒューマニズムを論じたことはあつたが、政治の中のヒューマニズムなどに、これまで関心をもつたり、論じたりしたこともあるまい。  ▼情勢がこゝまで進んできて、政治家と文学者との接触の機縁を得た途端に、本多氏が『政治の中のヒューマニズム』なるものを大慌てに論じようとしても、それは単なる応急処置的なヒネリ出し理論にとゞまるだらう、政治と文学との連結に関しては、既に手遅れだといふことを本多氏はもつと痛感し、発表する文章が、満身創痍の伏字だらけの文章で書かないだけのこの際特に冷静さを必要とするだらう。 田無 歯科 掃き溜めに鶴

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