大吉は凶に還る

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上野へ朝着いて

09 Sep 13 - 21:03

 上野へ朝着いて、耕吉はすぐ新進作家の芳本の下宿している旅館へ電話をかけた。 「僕ね、今度ね、商売に出てきたんだが、……千円ばかしの品物を持ってきたんだが、……だから宿料の点はだいじょうぶだから、四五日君の処へ置いてくれ」 「ではとにかく来たまえ」耕吉の聴取りにくい電話を受けて、芳本は答えた。  惣治から借りてきた恐ろしく旧式なセルの夏外套を着て、萌黄の大きな風呂敷包を載せて、耕吉は久しぶりで電車に乗ってみたが、自分ながら田舎者臭い姿には気がひけた。  まだ朝の八時前だったが、芳本は朝飯をすまして一散歩してきて、机の前にもきちんと坐っていた。一二年前のある文芸雑誌に、ばかに大きな湯呑で茶を飲んでいる芳本の体躯が、その湯呑で蔽われているようなカリケチュアが載ったことがあるが、ちょうど今もきゃしゃな小さな体躯に角帯などしめて、その大きな楽焼の湯呑で茶を飲んでいた。 「イヨー、すっかり米屋さんといった風じゃないか、蠣殻町だね、……どう見ても」ぬうっとはいってきた耕吉の姿を見上げて、芳本はくりくりした美しい眼を光らして、並びのいい白い歯を見せて笑った。耕吉は「これだ」と言って風呂敷包を座敷の隅に置いて、 「じつはね、今度ね、祖先伝来の家宝を持ちだしてきたんさ。投売りにしても千円はたしかだろう。僕の使う金ではないが、弟の商売の資本にするのだ」  耕吉は弟にもそう言われてきたことだが、またそれだけのもったいないをつける価値もあると信じたので、特に祖先伝来の家宝という言葉に意味を持たせて言ったのだ。 「まあまあ話は後にして、とにかく一風呂浴びてくるといいね。ばかに煤ぼけてるじゃないか」韓国デリヘル 鶯谷 http://utanu.dossiers.com/

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